【レビュー】『D.C.4 Fortunate Departures~ ダ・カーポ4~ フォーチュネイトデパーチャーズ』はただの”ファンディスク”ではない

『D.C.~ダ・カーポ~』シリーズは2002年に発売された第一作の発売から20周年を迎え、数多くのファンに指示されるコンテンツへと成長している。ナンバリングタイトル以外にもファンディスクも取り揃え、アニメや漫画などへのメディアミックスも活発な動きも見せてきた。シリーズ未プレイであっても「タイトルは聞いたことがある」という方も多いはず。

2019年に発売されたナンバリング最新作『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』はシリーズファンにはもちろん、はじめて『D.C.~ダ・カーポ』に触れるという方にも強くお勧めしたいタイトルとなっている。シリーズものというと、過去作を知っておいたほうが楽しめるのではと思うかもしれないが、『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』はシリーズの中においても特に新しいユーザーに目を向けた作品なのだ。”過去作からのつながりを感じさせる要素は仄かにあるが、未プレイの場合でも物語の面白さは損なわれない”作品になっている。

今回の記事では『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』の後日談を描いたファンディスク『D.C.4 Fortunate Departures~ ダ・カーポ4~ フォーチュネイトデパーチャーズ』をご紹介する。

(ライター:一二三達哉)

ヒロインの魅力をとことん掘り下げた傑作

『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』に登場するヒロインたちはとても魅力的である。恋愛アドベンチャーゲームだからそれは当たり前という反論もあるだろうが、本作はヒロインのラインナップに隙が無い。高嶺の花ともいえるお嬢様、裏表の激しい妹的存在、主人公を甘やかすお姉さん的存在、学園のトラブルメイカー……などなど、美少女ゲーム”属性”としては王道ともいえるヒロインたちだが、彼女たちが持つ外見、性格、しゃべり方、ちょっとした秘密といった絶対的な個性が組み合わさり、唯一無二の魅力を持つ存在としてプレイヤーを魅了する。

▲ファンディスクということで、基本的にはヒロインたちの魅力をさらに深堀りする作品となっている。イベントシーンの破壊力がすごい

本作のキャラクターへの力の入れようは凄まじい。キャラクターデザインや原画に豪華なスタッフを揃え、そこで生まれたクリエイティブを一つのゲームの中に丁寧に実装している。ヒロインたちの魅力はさまざまな方向を向いているが、それは『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』という世界の中にしっかりと納まっている。複数クリエイターが関わる作品では、プレイしてみると”世界からはみだしている”ように感じるキャラクターが出てくることがあるが、本作ではそのような違和感は一切ない。そのうえ声優陣も妥協なく、著名キャストや実力派キャストが熱演を繰り広げる。
20周年の歴史を持つシリーズの新作ではあるものの、それに胡坐をかかず最高のヒロインたちを届けようというメーカーのこだわりには頭が下がる。

▲声優陣の名前が見られるスタッフロールを観て驚く方も多いのでは

『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』をプレイすると、不思議とどのヒロインのことも気になってくる。心の中の一番は人によって違うだろうが、苦手なヒロインは不思議と出てこない。嫌味のあるヒロインがいないというのも理由のひとつだが、それだけではないのだ。

本作ではキャラクター同士の横のつながりを丁寧に描いていることで、一人のヒロインから広がる”輪”を心地よく眺められる。自分にとって一番のヒロインを眺めていると、その周りのキャラクターたちの魅力も見えてくるという仕組みだ。これはヒロインだけに限った話ではなく、主人公の友人たちにも同じことがいえる。

▲『D.C.4 Fortunate Departures~ ダ・カーポ4~ フォーチュネイトデパーチャーズ』では、主人公を含めて複数のキャラクターのかけあいで進行する場面が多数用意されている

ヒロインたちとの恋愛以外にも見どころがたくさん

ファンディスクというと、ちゃちゃっと甘いところを見せて終わりという印象を持つかもしれないが、本作は創意工夫に溢れている。ヒロインごとのエピソードは、小さいながらもドラマがしっかりと描かれており、彼女たちの新たな一面を見ることができる。いちゃいちゃするエピソードだけを書いたものではなく、そこに至るまでの過程とその後もしっかりと描写されており、どのヒロインにもドラマがある。

▲プロローグを終えると任意のヒロインルートを選択してプレイすることが可能

さらには『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』では描かれなかった新しい事実や、プレイ後にちょっと考察をしてしまうシーンなども登場する。この考察をめぐらせたくなる要素の中には、シリーズファンや過去作をプレイしている人向けのものも存在する。しかし冒頭で述べたように、過去のナンバリングタイトルを遊んでいない場合も十分に楽しめることを保証する。過去作の設定やキャラクターを思い出すシーンは、過去作をプレイしていた人だけが気づくくらいの塩梅で書かれているからだ。新規プレイヤーは、『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』とそのファンディスクにあたる本作を遊べば幸せな時間を過ごせるだろうし、シリーズファンであれば過去作のことを思いだしてちょっと嬉しくなれる。

▲『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』の世界を拡張するような、新しい謎や気になる点も登場する。本作の中でヒロインたちとの物語は完結するが、ほのかな余韻を残す謎もある
▲過去作を遊んだという方は、キャラクターの苗字などにも注目。シリーズではおなじみの”杉並”も登場する

個人的に『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』は実に挑戦的な作品であると感じている。恋愛アドベンチャーというゲームジャンルで数々の作品がリリースされ、夢見るような恋愛は過去の名作の中でさんざん描かれてきた。『D.C.~ダ・カーポ~』シリーズもその流れの中で大きな役割を果たし、過去作は名作”泣きゲー”として高い評価を得た。そして、筆者のような過去作から追いかけている人間からすると、それは強く記憶に刻まれてしまっている。そんな状況だからこそ、現代のエンタメは際どい変化球を投げ込んでくる。時にそれは大きなヒットを呼び、何作も続いてきたシリーズものにおいてはカンフル剤にもなることがある。

しかし、そんな時代の流れの中で『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』が選んだのは、変化球ではなく、甘く、ときに切ない恋愛アドベンチャーの王道を研ぎ澄ます道である。描く恋愛はとにかく甘くて、切なくて。主人公の周りには数多くの魅力的なヒロインが奇跡的にたくさん現れるというお約束もしっかり果たしている。そのうえで、ありきたりなものにはならないように設定を緻密に汲み上げ、スパイスをうまく振りかけ、そのうえで実直にクオリティを追求することで最新作としての存在感を十分に見せつけてくれている。新しいユーザーに刺さるものを目指し、そして過去作のファンをも裏切らず、マンネリ化したなどとは言わせない一本を送り出してきたのだ。なかなかできることではない。

筆者は第一作からシリーズをプレイしてきており、その間に年を重ね、感銘を受けるものが変化したりしているが、『D.C.4 ~ダ・カーポ4~』や本作を遊んでいると、お決まりの言葉ではあるが”懐かしくも新しい”感覚が呼び覚まされる。若い方は恋愛アドベンチャーゲームの良さを楽しむ1本として、熟練の美少女ゲームファンはフレッシュな気持ちを呼び起こす一本として、本作をプレイしてみてはいかがだろうか。

(C)2021 CIRCUS

■タイトル:D.C.4 Fortunate Departures ~ダ・カーポ4~ フォーチュネイトデパーチャーズ
■ブランド:CIRCUS
■ジャンル:こそばゆい学園恋愛アドベンチャー
■発売日:2021年2月26日
■価格:
 パッケージ版 1万780円[税込]
 CIRCUS20周年特装版 2万4444円[税込]
 ダウンロード版 9680円[税込]
■対応OS:Windows 10
■原画:たにはらなつき、鷹乃ゆき、蜜桃まむ、如月ゆう、しゃゆり
■シナリオ:愛羽(シナリオ総括)、ハサマ、相良中通、日富美信吾、満腹亭白米

『D.C.4 Fortunate Departures ~ダ・カーポ4~ フォーチュネイトデパーチャーズ』公式サイト
https://circus-co.jp/product/dc4fd/

DMM GAMES ダウンロード版購入サイト
https://dlsoft.dmm.com/detail/dacapo_0013/

PAGE TOP