【レビュー】『ふゆから、くるる。』でしか体験できない物語がある

シルキーズプラスから、SF四季シリーズの最終作として『ふるから、くるる。』が発売された。 もともと、四季シリーズは、すみっこソフトからリリースされていた作品群で、 四季の秋にあたる『あきゆめくくる』 がリリースされたのは2016年のこと。初、夏、秋とシリーズ作品が人気を博したが、最後にあたる”冬”をテーマにした作品が諸事情で発売されなくなったという経緯がある。

そんな幻になりそうだった作品が、シルキーズプラスから発売されたというのはファンにとってはたまらなく嬉しい出来事だ。本作のシナリオライターである渡辺僚一氏は、美少女ゲームでなければできない表現を巧みに使い、その作品でしか描けないドラマをいつもプレイヤーに見せてくれる。

▲かわいい女の子がたくさんいる百合ゲーと思いきや、その中身は想像を超えるドラマとなっている

シリーズものというと、「最初から遊んでいないと楽しめないのではないか」と考える人もいるだろう。しかし、四季シリーズ、本作に関してはその心配はない。『ふゆから、くるる。』一本で完結する作品となっており、過去のシリーズ作の要素を知らなくても楽しむことができる。過去作をやっていると、作中のちょっとした描写から、かすかなつながりを感じられるのだが、未プレイだからひっかかる要素が残るという作品ではないのだ。

主人公が女性キャラクターということで、本作の情報を素直に受け止めると、女性同士の恋愛を描いた「百合ゲー」のように見えるかもしれないが、プレイすると本作の意外な姿に気づかされる。確かに”百合”的なテイストはあるが、それは本作の一要素に過ぎず、一番の見どころは壮大なSFストーリーにある。

今回の記事では、革新的なネタバレには触れない形で、本作の魅力を紹介する。

(ライター:江ノ島淳)

学園SFミステリー

本作の舞台は、全寮制の外部から隔離された学園。女の子ばかりがいるその学園では、女の子同士のほのぼのしたやりとりや、エッチな出来事が盛りだくさん。主人公の空丘夕陽は、そんな学園の中をマイペースに生きている。序盤は先述したようにポップで百合風味も強いが、不可思議な情報も次々とプレイヤーに開示されていく。

▲主人公の空丘夕陽は、女の子ばかりの学園で、気ままな毎日を送っている
▲女の子同士の学園では、エッチな出来事も発生する。序盤ではさまざまなカップルの営みを見ることができる。一見百合ゲーに見えるが……じつはそうではない

学園で生活するのは女の子たちはなぜか”不死”の存在で、彼女らは大人になり、そのあと同じ時間をかけて赤ん坊になるまで幼くなり、再びに大人になるまで成長し、再び赤ん坊に戻っていく……という不思議な周回を繰り返しているという。

この不思議な周回を抜けだし、学園を卒業するためには、観測者から「天才である」と判断される必要があるらしい。天才であると見なされた瞬間、卒業を認められ、学園から姿を消すというのだ。

この摩訶不思議な舞台では、独特のルールや倫理観がある。基本的に不死な少女たちだが、首を斬られてしばらく時間が経つと蘇ることができなくなる。だからこそ、殺人は”まだいい”が、人を殺して首を隠すというのは”やってはいけない”こととされている。

▲序盤から不穏な設定がちらほら登場する。こうした伏線が、物語を凄まじい勢いで面白くしていくのだ

ある日、夕陽の友人の霜雪しほんが殺されてしまう。なんと、しほんは、ただ殺されただけでなく”首を隠されて”しまったのだ。この事件に向き合うために、夕陽は”探偵”となって調査を始める。この調査が、学園や、そして世界の謎を徐々に明らかにしていく。

本作の大きな見どころは、一見関係のなさそうな要素が、実にユニークな形でつながっていくところ。序盤の世界設定を見せてくれるパートでは、”百合ゲー”のような女の子同士の甘い関係性が描かれ、そこから殺人事件の捜査でミステリー色が強まっていき、SF用をも顔を出してくる。

しほんの殺人事件を解決するという最初の目的も、本作の壮大な物語の一部であり、途中でプレイヤーが「これは何ゲーなのか」とわからなくなってきたところを過ぎたあたりで、本作の真の姿が見えてくる。怒涛の伏線回収が始まり、謎解きと解決のカタルシスが次々と訪れる頃には、「やられた」と感じるプレイヤーも多いはず。

▲さまざまな人物や出来事がつながっていき、真相へと近づいていく中盤以降は、前半とは別の作品のような雰囲気すらある

ビジュアルよし、サウンドよし、システムよし!

本作のキャラクターデザインに一目惚れしたのなら、買って損のない作品となるだろう。通常の立ち絵から繊細に作りこまれており、何気ない会話シーンでもキャラクターの見た目に引き込まれる。

イベントシーンは実に美しい塗りで仕上げられていて、語られているシナリオの内容によって大きく雰囲気を変えてくるのは実に見ごたえがある。

日常シーンではほのぼのとした空気が、エッチシーンでは甘い雰囲気が、シリアスなシーンでは緊張感が伝わってくる。美少女ゲームという、キュートな女の子が登場するジャンルで、SFやミステリーといった物語を表現することで生まれる面白い”ギャップ”を、見事にビジュアル方面でも見せてくれる。

▲本作が”百合ものではない”ことも、エッチシーンなどを通じて明かされていく

サウンド面では、声優陣の熱演にも注目したい。ゆったりとしたオープニング付近の演技でキャラクターの雰囲気を十分に伝え、そこからさまざまな表情を見せてくれる。”可愛いだけではない”難しい設定のキャラクターが多い中、その理解を助けてくれる声優陣の表現力には驚かされることが多かった。恥じらう声や色気のある声といった美少女ゲーム的なお約束のボイスから、迫真の叫び声や、緊張感を伝えてくる静かで繊細な演技など、聴き所はもりだくさん。

また、作中のシーンに応じて柔軟に切り替わるサウンドも見逃せない。主題歌などのボーカル曲もぜひ、音を楽しめる環境で聞いてほしい傑作だ。

システム面はさすがのシルキーズプラス制作品ということもあって、じつに遊びやすい。本作のシナリオは、没入感の高いものになっているが、ストレスなく読み進めることができるのは、完成度の高いUIのおかげだろう。

また、作品の雰囲気を伝えてくれるUIの見た目も遊び心があって見ていて面白い。発売日付近は、誤字脱字がいくつか見られたが、それも現在はアップデートで修正され、さらに完成度の高い作品となった。

▲声優陣の熱演も本作の見どころのひとつ。難しいキャラクターたちを、見事に表現している
▲ストレスフリーに遊べる作品となっており、アップデートで誤字や脱字も修正された。画像はメッセージウィンドウの位置を変える機能を適用したもの

遊ばないとわからない傑作

本作には、さまざまな驚きがある。

筆者は四季シリーズを遊んでおり、それらの作品で既に驚きに満ちた物語を体験してきたので、今回は身構えていたが、それでもやはり心揺さぶられるシーンの連続であった。名作と言われる美少女ゲームもいくつも遊んできて、さまざまなエンターテインメントにも触れ、驚ける物語に出会える回数も減ってきたが、本作はそんな筆者にもしっかりと刺さった。

新鮮な物語が読みたいと考えている人がいるのなら、この『 ふゆから、くるる。 』を遊んでみてほしい。そして、気に入ったのなら、ほかの四季シリーズ『はるまで、くるる。』、『なつくもゆるる』、『あきゆめくくる』も手に取ってみてほしい。

▲シナリオのスピード感がとにかく心地よい。独立した一本の作品として楽しめるので、本作から四季シリーズに入るのもいいだろう

■タイトル :『ふゆから、くるる。』
■ブランド名:シルキーズプラス

■スタッフ:
企画・シナリオ:渡辺僚一

キャラクターデザイン・原画:あめとゆき / なのはなこひな
主題歌/ED曲:逢瀬アキラ
■パッケージ版/ダウンロード版発売日:2021年9月24日
■対応OS:Microsoft® Windows® 10 / Windows® 8.1 ※日本語版
■価格:パッケージ:スペシャリテ版12,430円(税別価格 11,300円)パッケージ:通常版10,780円(税別価格 9,800円)

■年齢区分:18歳未満購入禁止
■公式サイトURL:http://www.silkysplus.jp/game/fuyukuru/

FANZA GAMESからダウンロード
https://dlsoft.dmm.co.jp/detail/silkysall_0037/

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