人がほぼ滅亡した世界で、文化や文明を復興する
「希望や幸せって、なんですか?」
Purplesoftwareの新作『クナド国記』は、破滅を回避した人類が文明を復興していくアドベンチャーゲームだ。復興といっても『シムシティ』のような街づくりを実際に行うわけではなく、生き残るために戦い続けて来た人々に、交流を通して過去の文明や文化を伝えていく物語となっている。……今はそういうことにしておこう。
というわけで本稿では、『クナド国記』体験版のインプレッションをお届けする。
※体験版は製品と内容が異なる可能性があることを、あらかじめご了承ください。
『クナド国記』の世界では、西暦2034年に突如として発生した「鉄鬼」と呼ばれる謎の金属生命体の猛威により、人類のほぼすべてが駆逐されていた。人類を人類たらしめていた文化の象徴である鉄を始めとする金属製品も使用不可能となり、文明や技術は失われ、人類は生き延びるためにすべての力を注ぎ込み続けた。
それでも鉄鬼の前に人類は減少の一途をたどり、鉄鬼の活動がゆるやかな‘隙間’でのみ、人類は生き延びることが出来たのだった。
金属を失った人類はどのように戦ったのか。その原動力となったのが「能力者」と呼ばれる存在だった。普段は世に隠れ、あるいは国の管理下にあった能力者たちは、人類の危機に対しさまざまな能力を発揮しかろうじて人の生存権を繋ぎとめた。戦いの中、ただの人からも次々と能力者が現れるようになったが、その原因は人体を構成する金属物質の影響であると推測されるも研究は進んでいない。能力の多くは、火や水や風など、自然に由来する能力となるが、ただの怪力のような単純な物も存在している。
文明の力を失った人類が、それでもギリギリ生存できているのはこの力のおかげであるが、同時に、人種や性別や宗教以上に、能力による格差を生じさせてもいる。
そして鉄鬼の発生から約1000年。遂に人類は鉄鬼に対して勝利した。本作の舞台となるカント(関東)の英雄である夏姫(なつひめ)が、強大な鉄鬼・黒神の1体と相打ちになったのだ。夏姫は消息不明となったが人類は1000年ぶりの安らぎを得ることとなった。
それから約100日が経過し、黒神の中から発掘されたひとりの青年が目覚めたところから物語はスタートする。そう、彼こそがあなたであり『クナド戦記』の主人公だ。あまりに長い冷凍睡眠状態に置かれていたためか、自分の名前すらわからない記憶障害を抱えているが、なぜか古代……私たちが生きる現代の知識を豊富に持ち、戦い以外のことを何も知らないカントの住人たちに、文化と技術を伝えるために活動することとなる。
しかし想像してみよう。1000年もの間、生きるために全てを犠牲にしていた人間たちがどのような存在なのか。
そう、脳筋である。強さがすべてで脳みそには戦いに関すること以外、何も詰まっていないのだ。
社会体制も戦いに特化している。カントの国はわずか800名の人口で構成されており、国とは言うが、小高い丘に沿った小さな街くらいの規模しかない。なお、人口が増えすぎると鉄鬼に感知されてしまうため、長く人口は1000人以下にとどめられていたようだ。
主産業は農耕と木工。
彼ら以外に生き残っている集団は現状確認されておらず、外部交流はない。
小高い丘に沿って、街が建てられている。
上層に王宮。
中層に職人街。
下層に農地。
中層の職人街は、生活に必要な品を生産している国の要。
下層の農地は広く土地をとっているが、そのために鉄鬼からの襲撃が定期的に発生している。
身分制度は存在しないが、職人はやや優遇され、農民はもっとも代替可能な人員として認識されている。
カントの住人は仮面をかぶっており、誰かが死んだら誰かがその仮面を付ければ死んだことにはならないという、個人の権利や尊厳を認めないルールが成立している。長く死と隣り合わせの人類が生みだした、種としての人を存続させるためのルールであることは分かるが、現代人からすれば吐き気を催すような代物がまかり通っているのが現状だ。果たして主人公はカントの地を人の営みが満たす地に変えることができるのだろうか?
カントの住人たち
さて、世界観があまりにも独特なのでキャラクターの紹介が後回しになってしまった。というわけでここからは『クナド国記』に登場するヒロインたちを紹介していこう。
先ほどからちょくちょく登場しているこちらの女性が、春姫(はるひめ)だ。”八剣”筆頭の一之神にして、カントの統治者。愛らしく品のよいお姫様で、カントでは珍しい知性派でもあり、永い眠りから目覚めた主人公が最初に出会った人間でもある。
カント住人にしては頭を使うためかカロリー消費が多いようで、いつも大きなおにぎりを常備している健啖家。人と話すか食べるか選ぶなら、まず食べますと断言する食いしん坊。もっとも戦いに次ぐ戦いを経験してきたならば、いついかなるときも食べられるくらいでなければ生き延びられないのかもしれない。
一之剣たる彼女の能力は”言霊”。口にした言葉が現実化する強大な力で、自らが信じて口に出した言葉は必ず強制的に実行される代物。「私を認識できない」と他者に言い聞かせれば、たとえ目の前にいても認識できなくなり、夏の季節に桜の花を咲かせ、拳に破壊の言葉を乗せれば鉄鬼すらも打ち砕く可能性を秘めた人類の希望。作中でも彼女の力のすさまじさは、何度も目にすることになる。
次に紹介するのが優里(ゆうり)だ。水がいっぱいに入った大きな水がめを軽々と持ち運べる怪力の能力を持つ女の子だが能力者としては底辺で戦闘力は低く、一般人扱いとなっている。いったい鉄鬼とはどれほど強大な存在なのか。カントの常識に慣れない主人公に対し、春姫直々に一般住人のサンプルとして世話役を任されたようで、少々堅物のきらいがある。
その融通の利かなさは、試しに主人公が下着を見せてくれと命じたところ、本当にいやいやながらも即座に応じるほど。このように、カントの住人は自分の頭で考える力が弱く、上位者である春姫から「主人公の言葉に従え」と命じられている場合、個人としての羞恥心は置いておき、指示に従う傾向がある。まるで軍隊のようだ。
右の白い服に赤い帯の子が茜。左の黒い服に青い帯の子が葵。双子の姉妹で二人合わせて”八剣”の二之神を務める、カントの最強戦力だ。
茜は自信満々で他人の話をあまり聞かず、勘が良すぎて頭をあまり使わない。しかし芯の曲がったことはせず、誰にでも面倒見がよい。みんなのかわいいお姉ちゃんで、好きな食べ物はお豆腐ハンバーグ。
葵は茜以上に天真爛漫だが、戦うことを生きがいとする戦闘狂。姉のフォローとして一応は頭を使っているが、お姉ちゃん大好きで意志決定のすべてを茜に任せている。かわいい暴力装置。
左側の背の高い女の子が、”八剣”の六之神である燕(つばめ)。八剣の中では数少ない非戦闘要員で、希少な医療系の能力を持っている回復要員だ。自らの血を媒介とする必要があり他者による乱用を避けるため、八剣の地位に置かれている。
そして最後に紹介するのはあなた自身。すなわち主人公だ。言霊使いの春姫によって「わたしは、あなたを信じます」「このカントの国に、失われた希望や幸せをもたらすと約束してくれたあなたを、信じます」。単なる口約束ではなく、言霊による自らの魂を縛る契約として、「信」と名付けられたあなたは、春姫と共にカントで生きることとなる。また、信自身も言霊使いだが、春姫には遠く及ばない……とされている。
まずは学校から
さまざまな人々との出会いや鉄鬼との戦いを経た信は、まず学校を作ると決意する。教室に机、黒板と一通りの体裁が整い……。
お揃いの制服に身を包んだヒロインたちが顔をそろえる。少人数で生きてきた脳筋たちに、読み書きの意義を教える。そして文明の発展が生活に余裕を生み、生活の余裕が文化を生む。いつか能力が無くても生きて行けるような豊かで幸せな生活を営めるための下準備を、ここで始めることになったのだ。勉強を生存戦略として考えるカントの住人たちにも学習の有効性はすぐに理解され、教育は順調に進むかと思われた。
が、しかし、信はあるときどこかの空間に飛ばされ、警告を受ける。「春姫に気を付けろ」と。その女性はどこか春姫に近しい存在のようだった。
そして、信はカントの街中で鉄鬼と遭遇する。やむを得ず立ち向かうことになった信は、見よう見真似の言霊で対抗しようとするが……。
己の真実の一端に、向き合うこととなる。
果たして、信の正体は何なのか。なぜ春姫たちは助けに来ないのか。体験版のストーリーはここからあと、少しだけ続く。ぜひ、あなたの目で確かめてもらいたい。
■タイトル:クナド国記
■ブランド:Purple software
■ジャンル:破滅を回避した人類が文明を復興していく”再生と青春の物語”ADV
■発売日:2021年12月24日発売予定
■対応OS:Microsoft Windows 8.1/10
■価格:1万780円[税込]
■年齢区分:18歳未満購入禁止
■スタッフ:
シナリオ:御影
キャラクターデザイン・原画:アサヒナヒカゲ/克
ディレクター/プロデューサー:石川泰
■公式サイトURL:https://www.purplesoftware.jp/products/kunado_kokuki/