CUBE より2022年11月25日に発売された『サメと生きる七日間』。本記事では日常生活の中に潜む違和感が重なっていき、いつしか大きな謎に巻き込まれていくストーリーに加えて周回プレイによるシナリオの魅力など、『サメと生きる七日間』が持つ魅力を紹介していきたい。
(ライター:MW岩井)
海で溺死寸前の記憶からの、全裸美少女との遭遇と、そこからの警察へ連行。美少女に囲まれた生活のはじまり
気付くと、自分(深海恭平)は沈みつつあった海中から、水面を眺めていた。「俺はこのまま死ぬのか…」現実を受け入れ、遠のく意識。しかし次の瞬間、目を覚ますと見知らぬ海岸に打ち上げられていることに気付く。「助かった…?」そう考えながらも、頭部に違和感。手で確認してみると、全裸の美少女(くーこ)が俺の頭に噛みついていた。
そんな導入で始まる、このゲーム。
この時点で「サメ」要素は…強いていえば、全裸の美少女の髪色がサメっぽいことくらい。この少女と生きるってこと…? でも7日間ってなんのこと…?
そんな疑問を持ちながらも、シナリオは進む。
美少女を連れて歩き回り、人家らしき建物の近くに立っていたのは競泳水着に身を包んだ、これまた可愛い女の子。
「良かった~~! 生きてたよぉ~~!」
女の子(保城麗水)はそう叫びながら恭平の顔を抱き寄せ、胸の谷間に埋める。どうやら、この女の子は自分の知り合い以上の関係のようだが、彼女の顔や声は自分の記憶にはない。とは言え、好意的に受け入れられているようだし、何より胸の谷間が心地よい…なんて思っていたら、くーこが放った一言で状況は一変する。
「くう。このひと、に、おそわれた」
鳴り響くサイレン。手首を締め付ける手錠。天国のようなシチュエーションから、急転直下の被疑者へと転げ落ちた恭平。しかし交番で出会ったのは、制服が小さいためか胸の谷間をこれでもかとアピールしている船堀お姉さん(本名不詳)。
事情聴取の結果、犯罪は立証できないということで開放された恭平。疲れ果てて戻った先は、麗水が住んでいる海の家。麗水の話によると、恭平は彼女と二人でここに寝泊まりし、学校へと通っていたという。しかし、恭平にはその記憶が一切ない。まるで、プレイヤーである我々と同じように。
そして、海で拾った美少女「くーこ」も帰る家がなさそうなので、ひとつ屋根の下で恭平と麗水、そしてくーことの共同生活が始まった。
キャラクター別の攻略難易度は低目。女の子たちとストーリーを存分に楽しもう
ゲームの進行は、一般的なアドベンチャーゲームと大きくは変わらない。シナリオを読み、適宜表示される選択肢を選ぶことで、攻略するキャラクターごと(+α)のシナリオへと分岐していく。
このゲームの親切なところは、プレイヤーが選ぶ選択肢が表示されるときに、それを選ぶと誰の好感度が上がるかは顔アイコンが表示されるため、攻略キャラを間違えることはない。
サメが人を喰うことが当たり前の島、鮫島。南の島での生活に感じる違和感
さて、話題をストーリーに戻そう。麗水とくーことの共同生活が始まった恭平は、まったく記憶が戻らないまま、翌朝を迎える。
「ウーーーーーーー」
島全体に鳴り響く、大音量のサイレン音。続いて、スマートフォンに掛かってきた母親からのモーニングコール。記憶を失っている息子に驚くこともなく、普通に会話を続ける母親。学校へ行くと、昨夜に恭平を取り調べしていた婦警さん、船堀お姉さんが教壇に立っていて。そして、海産物が豊富に捕れるはずの島で、なぜかタコが神聖な生き物として祀られており、食すどころか捕獲すら禁止されていること。
ひとつひとつの違和感は小さく、見過ごしがち。だが、違和感はこれだけにとどまることはなかった。
翌朝、目覚めるとくーこがびしょ濡れに。麗水はくーこのおねしょを疑うが、濡れているのは下半身だけではなく全身。しかも液体からアンモニア臭はせず、どうやら海水のようも思える。
こうした違和感の数々は頭のどこかには残りつつも、それをかき消すような出来事の連続。たとえばくーこは目覚めたあと、全身が濡れていたために恭平がくーこをお風呂に入れてあげることに。
一緒にお風呂に入った恭平も全裸になるが、くーこは恭平のアレに興味を持ち、両手でいじくり始める。どんどん大きく、固くなる恭平のアレ。くーこに「止めろ」と言っても興味津津で、アレから手を離そうとはしない。
さらにくーこは、自分の身体を洗ってくれとのリクエスト。え? 洗ってあげるとくーこの好感度が上がるんですか? マジで? 身長145cmでバストはAカップのくーことは言え、身体を洗ってあげたらこちらの好感度も上がってしまいそう…。
そんなある日、決定的な違和感を感じる事件が起きる。サメが島に現れ、2名が食べられてしまったというのだ。しかも、その2名はどちらも学校のクラスメート。しかし翌日、登校してみると教師の船堀お姉さんは驚く様子もなく「二人は欠席というか除籍になった」と言い放つ。
人が死んでいるのに、彼女の冷静さは何だろう? この島では、サメが人を食べるのは当たり前のことなのか? 次は自分が食べられてしまうかもという恐怖心を抱く人間は、自分以外に一人もいないのか? ここは本当に日本なのか? そんな疑問がグルグルと恭平の頭を巡る。
こんな数々の「小さな違和感」を感じながらも、美少女たちに囲まれた離島ライフを満喫していた恭平。ゲームタイトルにもあった「7日間」の最終日を迎えたが、この日は島のお祭りが開催されるとのこと。恭平はもちろん、身の回りの女の子たちも祭りを堪能。しかし、その夜に衝撃的な事件が起きる。
攻略可能な女の子ごとに用意された別シナリオにより、少しずつ明かされる島と7日間の秘密
これ以上のストーリーを紹介することはネタバレになるので止めておくが、一つだけ伝えておくことがある。攻略可能な女の子ごとに用意されたシナリオは、どれも「それぞれの立場から」この島の秘密に迫った結果だ。つまり全容を把握するためには複数キャラでのシナリオを読破する必要がある。つまり、周回前提のゲームというわけだ。
そういうゲームシステムだからこそ、このゲームには「既読テキストをスキップ」するや、「次の選択肢までスキップする」機能が用意されている。しかし、筆者が2周目をプレイした時に感じたものは、スキップ機能が意味を持つのはゲーム序盤だけであり、別の女の子を攻略するルートに入ると、使い回しのテキストや選択肢はほとんどない。
▲既読テキストをスキップする機能も、前後の選択肢へと移動する機能もあるが、攻略する女の子が変わるとほとんど機能しなくなる
つまり、このゲームのシナリオの大部分は、島や7日間の秘密に「別角度から」迫るためのシナリオであり、文章や選択肢、画像の使いまわしなどはかなり少ないと。1周目でくーこの好感度を上げまくっていた筆者はくーことお風呂に入るイベントに進んだが、2周目では麗水の好感度を上げつつ進むと、麗水がサメに襲われるイベントが発生。恭平は流血している麗水を看病することになり、くーことのイベントは発生しなくなる。
つまり「飛ばし読み」するテキストなど皆無。各ルートのテキストを読み、プレイヤーはさまざまな情報を得て、島の秘密に迫っていくことになる。
キャラクターの魅力と声優さんらによる熱演で、心を動かされた作品
アダルトゲームの場合、一番期待されるのはイラストや声優さんの演技だろう。しかしこのゲームではそれらに加えて、1キャラを攻略するごとに少しずつ明らかになっていく「この島の秘密」というミステリアスな要素もある。前述したようにテキストの多くは共通したものではなく個別に書かれたものなので、こんなにも長時間楽しませてくれるゲームだとは想像以上だった。各キャラ別のCGもクオリティが高いうえに表情やポーズといった差分データも豊富で、存分に楽しませてもらった。
キャラクター設定も良く、特にメインヒロインとして据えられている「くーこ」の幼い印象から感じる背徳感は、普段あまり感じたことのない感情だった(登場人物は全員18歳以上だと、ゲーム冒頭で説明済)。
謎の解明に限っては100%完璧とは言い難いものの、それでも勢いのあるシナリオと声優さんたちの熱演に支えられて、プレイ後感はかなり好印象なソフトとなった。この絵柄が好みというなら、損はさせない。
最後に。このゲームは「ゲーム終了」を選ぶと、毎回ロゴ入りのメインビジュアルが1秒間ほど表示される。パタリと終わるのではなく、「また遊んでね」「待ってるよ」という声が聞こえてくるような、そんな1枚絵。
僕はたぶん、登場人物たちに恋してしまったんだと思う。
■タイトル:サメと生きる七日間
■ブランド:CUBE
■ジャンル: サメと織りなす恋愛ADV
■原案:三河ごーすと
■シナリオ:三河ごーすと、エノモトタケシ、かざみもよう
■シナリオプロデュース:むらさきゆきや
■原画:つるこんにゃく、ゆさの、倉澤もこ、黒兎
■背景:わいっしゅ
■音楽:Peak A Soul+
■発売日:2022年11月25日
■価格:通常版10780円(税込)/特別限定版 15180円(税込)
■対応OS: Windows 8.1/10/11
■公式サイト:http://www.cuffs.co.jp/products/samenana/