【レビュー】『乙女の剣と秘めごとコンチェルト』は可愛い女装主人公×ヒロインとのラブコメと作品独自の剣戟”カデンツァ”を丁寧に描いた作品

ensembleより発売中の『乙女の剣と秘めごとコンチェルト』。本作の内容を説明すると、「主人公は基本的に常時女装」、「ヒロインは剣と鎧をまとった美少女たち」、「でも舞台は現代」と、キャッチーかつフィクショナル設定が並ぶ、女装×騎士学園ADVと銘打たれた作品だ。

本記事では主人公、が女装しているからこそ味わえるラブコメ要素&エッチシーンや、作中で展開される架空の剣戟バトル、カデンツァに説得力と迫力をもたらすための丁寧なテキストに演出といった、魅力を紹介していきたい。

(ライター:マンモス丸谷)

ヒロインとのラブコメはもちろん、世界観やバトルもしっかり描く

『乙女の剣と秘めごとコンチェルト』の冒頭をプレイ、もしくは公式サイト等で情報を得た際にまず目を引くのは、何と言っても主人公の設定だろう。本作は剣術を学ぶために海外留学していた主人公、空木日向が卯花陽菜に女装して、生徒も教員も全員が女性の銀蘭学園に入学するところからスタートする。
以降、一部シナリオを除くと日向はほぼずっと陽菜として生活し、ゲームの序盤から中盤、シナリオのルートが決まるまでは、同性と思ってスキンシップを図るヒロインから陽菜がいかに自身の秘密(主に勃起したお〇ん〇ん)を守り通すかが、物語の見どころになっている。

▲本作の主人公、卯花陽菜。ゲーム上での扱いは主人公というよりほぼヒロイン。表情や服の差分は豊富で、セリフもフルボイスで再生される

▲陽菜(日向)が露出度の高い衣装、フィエルテに恥じらう姿、女子どうしと勘違いされて行われるスキンシップにドギマギするなど、「女装もの」ならではのエピソードが十二分に用意されているのも魅力のひとつ

▲ストーリーの序盤~中盤は陽菜が男とバレないよう気をつけつつ、銀蘭学園に通うヒロイン候補たちとの友情を深めていく

ストーリー的な見どころとしては、銀蘭学園内での日常と戦闘描写であり、そこには本作独自の設定が数多く盛り込まれている。『乙女の剣と秘めごとコンチェルト』の世界には、騎士や歌姫を育成する学校が存在しており、陽菜は従姉妹のその友人の学園長に請われて、銀蘭学園に生徒兼剣術指南役として入学。魔法のようなレベルにまで進化した立体投影技術を使った剣戟「カデンツァ(舞闘)」での戦いを、銀蘭学園の生徒であるヒロインたちに教授しつつ、陽菜自身も剣術の腕を磨いていく。

▲本作の生活様式、文化レベルなどはおおむね現代の日本と変わりないが、唯一立体投影技術だけはすさまじく発達している。カデンツァはその立体投影技術の粋を集めた、テアトルと呼ばれる学園内の複合競技場で行われる

現代を舞台にしつつ、剣と鎧を着た少女どうしのバトルを成立させるためにかなり設定を練っている点に感心させられる。個人的にそういった気配り以上に魅力的に映ったのが、カデンツァを熱いバトルに見せるために積み重ねられるテキスト描写だ。

本作の日常パートは、女装している陽菜が次々と起こるトラブルに巻き込まれるコメディ、ヒロインたちそれぞれとのイチャラブ要素なのだが、それらと同じぐらいカデンツァにまつわる描写に筆が割かれている。カデンツァに向けて陽菜&ヒロイン全員が共に練習に励む姿はもちろん、カデンツァ本番でどのような攻防が行われているのか、勝敗をわけた理由などがていねいにテキストで書かれている。そのため、架空の競技ながら納得感とある種のリアリティを感じながら、ストーリーを読み進めていけるのである。

また、選んだルートによっては必ずしも主人公の陽菜側が勝つわけでもなく、カデンツァの勝負が物語のクライマックスではない場合もあり、ストーリーにバリエーションがあるのも特徴といえる。ヒロイン4人と隠しキャラ、いずれもかなりのテキストボリュームがあるため、読み物としても満足できるはずだ。

▲陽菜&ヒロインたちがライバルながら仲睦まじくカデンツァの練習に打ち込むシーンも見どころのひとつ

▲どのキャラクターをヒロインに選んだかによって、終盤で行われるタッグバトル、デュオ・カデンツァの相手が変化。すべてのルートで異なる展開の戦いがくり広げられ、勝敗を左右した理由も明確に提示されるため、読み物としての納得感が高い

主人公のリアクションも実用性アリ(?)でお得なエッチシーン

本作のエッチシーンはメインヒロインである小柴杏奈、天海依夜、クレール・メルル、椋木梨理の4人に用意されており、いずれもゲーム終盤に用意されたイベント、歌劇アリアに挑むパートナーに選んだキャラクターと肌を重ねることになる。

▲「気になる相手」として選んだキャラクターがヒロインとなり、ルートが確定。ちなみに一番下のつーちゃん(宮守睦月)ルートへは、すべてのヒロインのエンディングを見ると進めるようになる

▲各ヒロインの個別ルートに入ったあとは、エンディングを迎えるまでに3~4つ(ひとつひとつのシーンの尺は長め。最低1回は体位が変わる)のエッチシーンが!
▲エンディングを見たあとにアンロックされる後日談では、本編ではしなかった衣装でのエッチシーンを見ることができる

本作はエッチシーンに特化したタイプのゲームではないが、独自性の高い設定やストーリーのおかげか、エッチシーンも一般的な美少女ゲームではあまりお目にかからないシチュエーションになっているのが魅力だ。

まず、主人公の陽菜が女装したかわいいキャラクターなので、主人公が責められるシーンの絵的な実用性が高い。また、エッチに入るまでの流れが女装しているのがバレる→ヒロインに押し切られて本番へ……というケースが少なくないため、陽菜が責められる側に回るエッチシーンが多いのも特筆すべきポイント。“ふたなり”や男の娘といったジャンルがイケる人にとっては、かなり「使える」し、そちらの方向性に「目覚める」きっかけになるポテンシャルを秘めたタイトルであるとも感じた。

ヒロインの半分、天海依夜、クレールが陽菜の先輩、エッチシーンはないが日常パートで従姉妹の諏訪宗千佳、学園長のニナ・クリオーネに翻弄される描写も多いので、おねショタ好きにも刺さるタイトルだろう。

▲女装バレから恋人どうしになる話の流れに加えて体格差、性格面(エッチへの積極性)の違いなどで、陽菜が責められ喘いでいる印象が残る本作のエッチシーン

女装主人公という設定ならではのラブコメ&エッチシーンが楽しめ、独特な世界観の話を読ませるストーリー部分も充実している『乙女の剣と秘めごとコンチェルト』。個人的には魅力的なサブキャラクターが多く登場しているので、そちらとのエッチシーンも見たかった……と思ってしまうのだが、どのルートでも主人公は選んだヒロインとしかエッチはしないため、純愛ゲームとして完成度が高いと言えそう。しっかりとした世界観が確立したお話を読み進めつつ、変化球ぎみのエッチシーンが楽しみたい人にオススメしたいタイトルだ。


■タイトル:乙女の剣と秘めごとコンチェルト
■ブランド:ensemble
■ジャンル:女装×騎士学園ADV
■発売日:発売中(2023年7月28日)
■価格:パッケージ版 通常版 9800円(税別) /ROYAL EDITION(豪華版)12800円(税別)
■制作スタッフ(一部):
原画: 武藤此史/綾瀬はづき/湊みなも/えーたろー
シナリオ:水瀬拓未
サブ原画:ホームラン
SD原画:のいと
CV:橘まお / 円志乃 / 風鈴みすず / 白月かなめ / 榎本ねむ / 月野きいろ / 加々美澪 / 今谷皆美 / 手塚りょうこ
■対応OS:Microsoft Windows10/11 日本語版
■公式サイト:http://www.ensemble-game.com/29.otohime/

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