【レビュー】このクリエイター陣なら間違いない!2024年の話題作『アンラベル・トリガー』はもう遊んだ?

シナリオを工藤啓介氏、原画を有葉氏が手掛けた『アンラベル・トリガー』が好評を博している。この二人のクリエイターの作品というと、2021年の話題作『創作彼女の恋愛公式』を思い浮かべる方もいるだろう。発売元が変わったとはいえ、『アンラベル・トリガー』も実に丁寧に作られた、多くのプレイヤーに刺さる美少女ゲームとなっている。壮大な広がりを見せるシナリオの中で、美少女ゲームファンならぐっと心を掴まれるであろう恋愛描写と、新鮮味を感じる鮮やかな伏線回収が行われるのだ。

本記事では、『アンラベル・トリガー』の魅力を紹介する。

(ライター:メトロ加賀美)

多様な価値観と思想が渦巻く世界で

大国の緩衝地帯に設定されたフロスト中立特区は、観光地として成功を収めている反面、様々な種族が移住してきたことから事件や衝突が絶えない場所でもある。主人公は、この中立特区の「トリガー探偵事務所」の調査員として働く榊カイ。彼の目的は先の大戦で行方不明となった幼馴染の行方を捜すことだが、その進捗は芳しくない。

ある日、カイは大国のひとつヴィルカール帝国の第一皇女・ミリィと出会う。彼女は帝国内では珍しい穏健派で、平和を望んでいる。この出会いをきっかけに、カイの運命は思わぬ方向へと動きはじめ、やがてそれは中立特区や世界を揺るがすことになっていく。

▲ヴィルカール帝国の第一皇女であるミリセント・フリード・レオンハルト。通称ミリィ。平和を愛する彼女との出会いが、世界の運命を変えていく

国同士の微妙な関係が続く世界には、人間(ヒューム)、吸血人(ヴァンプ)、獣人(アニマー)という外見も特性も異なる3つの種族が存在している。本作では、国家や種族、そして立場の「隔たりや違い」がドラマの肝となっており、対立や歩み寄りの過程が見ごたえたっぷりに描かれる。プレイしていてしばしば現実社会の問題を思い浮かべてしまうのは偶然ではないだろう。本作には現実社会のようにリアリティを感じるシーンもあれば、現実社会でもこうあってほしいと思うような希望や喜びに溢れるシーンも登場する。

こう書くと、プレイヤーに問いを投げかけたり、諭してくるようなような作品なのでは身構える方もいるかもしれないが、『アンラベル・トリガー』はそんな一方的な作品ではないし、説教臭くもないので安心してほしい。おそらく、本作の物語を文章だけで読むとなかなかハードなシーンも多いが、ファンタジー色の強い世界観や、キュートなキャラクターたちが優しい緩衝材になっていて、わくわくしながら楽しめるエンターテインメントとなっている。

▲共和国連邦の秘密警察の一員であるソフィア・ノスコーヴァ。苛烈で冷酷な一面もあるが、カイに対しては愛嬌のある一面もよく見せる

▲トリガー探偵事務所にアルバイトとして入所してくる小花衣レイリ。距離感が近く生意気だが、あざとさも武器として隠し持つ

シナリオ重視のゲームだが
エッチシーンも「すごい」

シナリオ重視のドラマティックなゲームなので、エッチシーンの総数は控えめだが、そのひとつひとつが「強い」。つまり実用度が極めて高い。どのヒロインもそれぞれ肉感的に描かれており、エッチシーンの迫力がものすごいのだ。しかも、プレイ自体はノーマルでも、これしかないというような素晴らしいアングルのカットが頻発するうえ、こういう衣装が特徴的なゲームには欠かせない「半脱ぎ」も絶妙なバランスときているのだからぬかりがない。

本作の豪華限定版には、サブキャラクター3人のミニシナリオが収録されていることもお見逃しなく。本作のサブキャラクターは実に魅力的で、通常版の範囲でもぐっと惹かれるものがある。遊んでいて、「サブキャラクターも攻略できればいいのに……」という気持ちになったときに、このミニシナリオがあるのとないのとでは大きな差がある。

通常版のみを遊んでも物語として美しくまとまっており、傑作であることは揺るがないのだが、ミニシナリオを追加することで、さらに深く濃く、本作を楽しめるはずだ。

▲サブキャラクターも実に魅力的。ヒロインたちもそうだが、本作はキャラクターの内面があふれ出るような描写が実に秀逸

グラフィック、シナリオ、サウンド
高水準にまとまった傑作

『アンラベル・トリガー』はシナリオ、グラフィック、サウンドというアドベンチャーゲームの構成要素が実にハイレベルに保たれた作品である。好みがさまざまにあるプレイヤーの趣味嗜好を包み込むかのように膨大なボリュームのあるシナリオを、「外さない」グラフィックとサウンドが包み込み、遊んでいるうちにどんどん物語に引きこまれてしまう。

シナリオを工藤啓介氏、原画を有葉氏が手掛けた作品である『創作彼女の恋愛公式』とは物語や世界観の雰囲気が異なるが、丁寧な作りこみでプレイヤーをひきつける作品づくりはこのチームの大きな強みであり、特徴なのではないだろうか。このチームに今作から参加したクリエイター陣の仕事も見事である。

実は本作を遊ぶ前、国家間の問題や、思想や立場の対立や隔たりを描くドラマと、ファンタジー色の強いグラフィックの相性を少し心配した。ファンタジー色の強い作品は、力のかけかたが少し異なると、リアリティが極端に損なわれ、物語も世界感も重みを感じないふわふわしたものとなってしまうのではないかと思ったからだ。

それなのに本作は、絶妙なバランスで、ファンタジーとリアルの良いところどりを達成している。先にも述べたが、シビアな設定がファンタジーに包まれたことで、親しみやすいエンターテインメントになっていたのだ。このバランス感覚や見事。2024年を代表する傑作をまだ遊んでいないという方は、是非今から遊んでみてほしい。


■タイトル:アンラベル・トリガー
■ブランド:Archive
■ジャンル:アドベンチャーゲーム
■発売日:発売中(2024年3月29日発売)
■価格:
 パッケージ・通常版:10,780円[税込]
 パッケージ・豪華版:18,480円[税込]
 ダウンロード版:9,900円[税込]
 豪華限定・ダウンロード版:17,600円[税込]
■制作スタッフ(一部):
 原画:有葉、サイキライダー
 SD原画:九条だんぼ
 シナリオ:工藤啓介、高濱亮、森間まりも、恒石涼平
 アートディレクター:志水マサトシ
■対応OS: Windows 10/11日本語版
■ブラウザ版対応OS:Windows 10 / 11
■公式サイト:https://archive.nexton-net.jp/

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