2026年7月31日にダウンロード版が発売された『ネモフィリア-We pass each other-』。本作はCIRCUSの姉妹ブランド、CLOWNが贈るサスペンスADV3部作の1作目で、戦後間もない昭和を舞台にした作品だ。
本記事では昭和を舞台にしたからこそ成立している仄暗い世界観や、超常現象やトリックなしで描かれるサスペンス要素、登場人物の内面に迫る心理描写といった本作の魅力を、物語の要所には触れつつ最低限のネタバレで紹介していきたい。
「昭和」を舞台に人の業を描くサスペンス
『ネモフィリア』は、主人公「柊木蛍」の視点から太平洋戦争の終戦から間もない時代、とある山中にある宿坊の慈照庵で起こった事件を読み進めていくアドベンチャーゲームだ。物語は柊木家の使用人として働く蛍が、柊木家の長女「千鶴」とともに慈照庵へ向かう列車内からスタート。列車内では最近世間を騒がす女学生連続誘拐事件など、物騒な話題が混ざりつつも、基本的には蛍と千鶴、ふたりの若者の他愛のない会話がくり広げられる。


しかし慈照庵に着いて母親の柊木貴子、僧侶の宰天が登場すると、柊木家を維持するための望まぬ結婚、宰天が語る得体のしれない密教の教えなど、「昭和」を舞台にしたからこそ成立する、千鶴を取り巻くネガティブな状況が次々と明らかになっていく。


ゲーム中盤に入ると全体的に暗い話が続きながらも、蛍と千鶴、千鶴の妹である柊木澪による3人の会話シーン、蛍と千鶴のエッチシーンといった明るいエピソードも挟まれつつ進んでいくが、慈照庵の敷地内で首なし死体が見つかることで決定的にゲーム全体のトーンが変化。冒頭で千鶴が話題にしていた女学生連続誘拐事件とも繋がり、本格的なサスペンスへ移行していき、物語はクライマックスへ突入していく。


物語としてはこの1本で完結。主人公は続編『アンスリウム』でも活躍
『ネモフィリア』は作中に選択肢が現れないタイプのADVなため、一度のゲームプレイでエッチシーンをふくめた全ての要素を回収できる。


そのためシーン回収のためのくり返しのゲームプレイやシナリオ分岐の楽しみはないが、ゲーム(ビジュアルノベル)ならではの表現としてテキストとイベントCGで見せる、キャラクターたちの内面描写には、かなりのボリュームが割かれているのは特筆すべきポイント。主人公の蛍やヒロインの千鶴はもちろん、母親の貴子、さらには宰天にまで、「どうして作中で描かれるような性格、行動理念を持つように至ったか」が丁寧に描かれたうえで、物語のクライマックスへ突入していくようになっている。


心理描写の積み重ね&作中で起こる事件の全てが人間の業が原因という作りもあってか、謎を残すことなくこの1本でキレイに完結している印象だが、本作はCLOWNが贈るサスペンスADVの3部作の1作目であることが明言されている。2026年11月には2作目の『アンスリウム-i entrust to you-』の発売が控えており、こちらでは『ネモフィリア』では(おそらく意図的に)影が薄かった澪がメインヒロイン。本作で「女性と見間違えるような」外見と評されていた蛍は、女装した姿で登場。今回の事件後に澪が入学した全寮制の学校、吾野学園で起こる殺人事件に巻き込まれていく。

ゲームジャンルが「サスペンス」と表記されているにふさわしい陰惨かつ完成度の高いストーリーが展開される『ネモフィリア』。手に取りやすい価格でサクッと読めるビジュアルノベルとして楽しめるのはもちろん、本作でキャラクターや世界観が気に入った人には続編の『アンスリウム』ともう1本、同じテイストの物語を体験できる余地が残されている。サスペンスやホラーの読み物を探している&興味のある人には、強くオススメしたいシリーズだ。
■タイトル:ネモフィリア-We pass each other-
■ブランド:CLOWN
■ジャンル: サスペンス
■発売日:発売中(2026年7月31日発売)
■価格:3850円(税込)
■対応OS:Windows 11日本語版
※ブラウザ版は、Windows 11/Mac OS X Yosemite以上/Android 5以上 (7以上推奨)/iOS 最新バージョン対応
■スタッフ(一部):
原画:庄名泉石、やたぬき圭、つしまくりた
シナリオ:満腹亭白米
■URL:https://circus-co.jp/product/clown/nemophilia/











