ランプオブシュガーより2022年12月23日に発売された『アルカナ・アルケミア』。本記事では錬金術と現代テクノロジーが同時に存在する独特でユニークな世界観や、登場するヒロイン4人全員に質、量ともに充実したストーリーが用意されている点など、本作が持つ魅力を紹介していきたい。
(ライター:マンモス丸谷)
ていねいな描写でキャラクターの魅力を積み上げていくゲーム序盤~中盤
本作はゲームタイトルに「アルケミア」(錬金術=アルケミーのラテン語読み)とあるように、ファンタジー系のエンタメ作品ではおなじみの「錬金術」がゲーム全体の世界観、ストーリーなどに深く関わっている。錬金術がキーワードになっているだけでは美少女ゲームにおいても物珍しくはないが、本作の場合は舞台が現代で、しかも錬金術がスマートフォンのような現代テクノロジーの便利さに押されて、時代遅れの産物扱いで衰退しているという設定なのが面白いポイントだ。
プレイヤーはそんな世界の中では比較的錬金術が文化として息づいている、アレンビーク錬金都市に住む男子学生、唯央(いお)の視点から物語を体験していく。
ストーリーは主人公の唯央と、錬金術同好会、アルカナに所属する3人のヒロインが、巨大な錬金術用の大釜を発見、実験の末に偶然にもホムンクルス、フィーネを生み出してしまったところからスタートする。
そこからヒロイン個別のルートに入るまでは、人間社会の常識が備わっていないフィーネを中心にしたドタバタコメディ、アルカナの面々のキャラクター性を掘り下げるやりとりに加えて、フィーネがホムンクルスであることをカモフラージュするために「ケモミミ薬を作ろう!」といったような、錬金術がテーマのゲームらしい(?)話も展開されていく。
これらのエピソードで描かれる唯央とヒロインたちのかけあいは楽しく、テキストのボリュームも十分。読み進めていけば、本作の独特な世界観とともに、キャラクターたちへの愛着も湧くはずだ。
ヒロイン個別ルート突入後はエッチシーン解禁&怒涛のクライマックスへ
アルカナのメンバーとフィーネの日常エピソードを読み進めていくと、やがてキャラクター個別のルートを選ぶことに。本作のルート選択は実にシンプルで、ゲーム内で一度だけ選択肢が現れる遊園地のシーン、ここで一緒に過ごすことを選んだキャラクターがヒロインとなり、以降はエッチシーンも挿入されつつ、ひとりのヒロインにスポットライトをあてたストーリーが幕を開ける。
ただ、誰かひとりを恋愛対象として選んだからといって、ゲームの序盤から描かれてきたキャラクターたちの関係性が崩れることはない。唯央を含めたアルカナのメンバー+フィーネのコミカルかつほのぼのとしたやり取りは多少の変化はありつつも続いていき、そのうえで唯央と恋人になったキャラクターが抱えている問題を登場人物みんなで解決するという、物語のクライマックスへと突入していく。
この各ヒロインの個別ルートのカギになる「問題」の振れ幅が大きいのも本作の特徴。4人のヒロインのうちふたり、フィーネと叶音のルートでは問題が登場人物の生死に関わってくるため、いわゆる「泣きゲー」のような切ない雰囲気が漂う。一方で瑠璃と彩良に起こる問題はフィーネと叶音ルートよりは軽めで、ラブコメとして肩の力を抜きつつテキストを読み進められる。
4つのヒロイン個別ルート、すべて異なるテイストのストーリーが展開され、最後には非の打ち所がないハッピーエンドを見せてくれるのも、本作の大きな魅力といえる。
独特の世界観と振れ幅の大きい純愛ラブコメストーリーが楽しめる『アルカナ・アルケミア』。謎解き要素や一度ヒロインが確定してからのルート分岐はないものの、序盤から中盤にかけての日常パート、各ヒロインとのエンディングを迎えるまでの描写は質、量ともに充実しており、読みものとしてのボリュームはかなりのもの。ストーリー重視の美少女ゲームが好物な人には、ぜひ手に取ってみてほしいタイトルだ。
■タイトル:アルカナ・アルケミア
■ブランド:ランプオブシュガー
■ジャンル: ADV
■発売日:発売中(2022年12月23日)
■価格:パッケージ版・ダウンロード版 1万780円[税込] / 豪華版2万2000円[税込]
■制作スタッフ(一部):
原画: 萌木原ふみたけ
シナリオ:泰良則充、中島大河、玉城琴也、海音瑠奈
SDキャラデザイン:流かさね
ディレクター:水月紗鳥
■対応OS:Windows 8.1/10/11
■公式サイト:https://www.lumpofsugar.co.jp/product/arcana/index.html