今回のエントリー作品の中でも数少ない複数賞受賞(もう一つは準大賞)となった作品である。本来なら準大賞のみの受賞となるはずだが、この作品は抜きん出てシナリオが素晴しいということで、審査会協議の結果、この賞も受賞することとなった。
学生たちが集まってグループを作り、自作のロケットを飛ばす。そしてその中で繰り広げられる青春群像を、このライターの方は見事に描ききっている。エロの部分を抜きにしても、物語として大変に優れた読み物であり、また読者に伝わりづらいロケットのハード部分の説明にも心が砕かれ、わかりやすいものに咀嚼されている。
そういった工夫もなされているため、読者は序盤から無理なく物語世界に引き込まれ、またプレイ後の読後感も爽快なものとなっている。シナリオ的には読んでいて、決して損のない作品に仕上がっていると言えよう。
最後に一言。多くの美少女ゲームのシナリオライターの方々が、ライトノベルの執筆やアニメーションのシナリオに活動の場所を移していく昨今で、ライトノベルの作家の方に美少女ゲームのシナリオを執筆してもらうという今までと真逆の発想は、今後の業界の方向性にとって、ひとつの試金石となったのではないだろうか。
この英断をおこなったメーカーの方々にも敬意を表したい。
金賞・シナリオ賞受賞ありがとうございます。正直申しまして、シナリオ賞を受賞するとは露程も思っておりませんでした(笑)
本作の売りは『普通』です。特別な設定はなにもなく、少年と少女が恋に落ちてエッチして。まあ一部どう考えても普通ではないシーンも含まれておりましたが、それはそれとして本当に普通なんです。
ただ、その普通に対して徹底的に拘りました。特に恋に落ちていく過程は本当に丁寧に書いて頂きました。結果、キャラクター達の自然な行動が(一部普通ではありませんが)すっ、とプレイヤーの胸に染みていったのではないかと思います。
世界観もとても丁寧に作り込ませて頂きました。プレイしていくごとにコンテンツがオープンされ、キャラクターのサイドストーリーを見ることができますが、本編では語られないキャラクターの魅力が活き活きと書かれています。プロフィールモードも少しずつ公開されていくテキストにより、キャラクターの深みを感じて頂けたのではないでしょうか。
そんなキミのとなりで恋してる! ファンディスクの制作も決定。本編よりも一歩進んだ普通を感じて頂くべく鋭意制作中です。こちらもご期待くださいませ!
ミドルプライスの作品なので、作品ボリュームとしてはやや短めだが、その分、コンパクトにまとまっていてダレないシナリオだと言えるのではないだろうか。
内容的には、孫の将来を心配した祖母の願いで許婚を決めることとなった主人公が、与えられた期限の中で成長する物語である。攻略ヒロインは三人で、その三人の人間模様が描かれている中に、テキストの良さというか会話劇の面白さを見出せる。
どの女の子も魅力的に書かれていて素晴しいのであるが、特に注目すべきは攻略対象ではないのだが主人公の妹である。このキャラが狂言回しとして活き活きとしており、また物語の要となっているのだ。これからプレイする人達には、是非主人公とこの妹の兄妹の心の繋がりを読み取って欲しいと思う。そこにこの作品の主人公の本質が見れるのは間違いない。